ヨーロッパ・スペイン語とラテンアメリカ・スペイン語の違い
スペイン語は、スペイン本国とラテンアメリカで異なる進化を遂げてきました。この記事では、その歴史的背景、発音、語彙、文法、社会的な影響などについて詳しく紹介します。
1. 歴史的背景
ヨーロッパとラテンアメリカのスペイン語の違いは、15世紀末のスペインによるアメリカ大陸の植民地化に始まります。当時のスペイン語は変化の過程にあり、さまざまな地方の方言が存在しました。植民地化の過程で、以下の要因がラテンアメリカのスペイン語の発展に影響を与えました。
- 先住民族の言語との接触: 新しい語彙が導入され、一部の発音や文法にも影響を与えました。
- 例えば、「chocolate(チョコラテ)」「tomate(トマテ)」「canoa(カノア)」などの単語はナワトル語やタイノ語などの先住民族の言葉から来ています。
- スペインとの地理的隔たり: スペインでは消えた古い表現がラテンアメリカでは残ることがありました。
- スペインでは “vos”(ボス)は古風な表現としてほぼ消えましたが、アルゼンチンなどでは一般的に使われています。
- ヨーロッパからの移民: 移民の影響で地域ごとに異なるスペイン語の特徴が生まれました。
- 19世紀以降、アルゼンチンやウルグアイには多くのイタリア移民が流入し、発音や語彙に影響を与えました。
- 広大な領土の影響: ラテンアメリカは広大であり、地域ごとの言葉の違いが発展しました。
- 例えば、メキシコのスペイン語とアルゼンチンのスペイン語では、アクセントや語彙が大きく異なります。
一方、ヨーロッパのスペイン語は、フランス語や英語などの他のヨーロッパ言語の影響を受けながら独自の発展を続けました。
2. 発音の違い
2.1. セセオ (Ceceo) と セセオ (Seseo)
スペインとラテンアメリカで最も顕著な発音の違いは、「z」や「c」(e, i の前)の発音です。
- ヨーロッパ・スペイン語: /θ/(英語の “think” の “th” の音)
- “zapato”(サパト、靴)→ /θapato/
- “cerveza”(セルベサ、ビール)→ /θerbeθa/
- ラテンアメリカ・スペイン語: /s/
- “zapato” → /sapato/
- “cerveza” → /serbesa/
2.2. 「Y」と「LL」の発音
- ヨーロッパ・スペイン語: “ll”(エリェ) は /ʎ/、”y”(イグリエガ) は /j/
- ラテンアメリカ・スペイン語: ほとんどの地域で両方とも /j/ に統一(「イェイスモ (Yeísmo)」と呼ばれる)
- 一部の地域(アルゼンチンなど)では /ʃ/(英語の “sh”)や /ʒ/(”pleasure” の “s” の音)
- 例: “lluvia”(ジュビア、雨)→ “shuvia”
2.3. 子音の強さ
- ヨーロッパ・スペイン語: 音がはっきり発音される。
- “estar”(エスタール、いる)は最後の「r」まで明確に発音。
- “los amigos”(ロス アミーゴス、友達) の “s” もはっきり発音。
- ラテンアメリカ・スペイン語: 語末の “s” や “r” が弱くなる傾向。
- “estar” → “está”(エスタ)
- “los amigos” → “loh amigoh”(ロ アミゴ)
6. まとめ
ヨーロッパ・スペイン語とラテンアメリカ・スペイン語には、発音、語彙、文法など多くの違いがあります。しかし、どちらも正しいスペイン語であり、相互理解は十分に可能です。
豆知識: スペインの映画やドラマでは “vosotros”(ボソトロス)がよく使われますが、ラテンアメリカの作品では “ustedes”(ウステデス)が主流です。
学習者やビジネス関係者にとっては、目的に応じて適切なスペイン語のバリエーションを選ぶことが重要です。この違いを理解することで、より深くスペイン語圏の文化を楽しむことができます。
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