スペイン語とポルトガル語:違いと共通点まとめ

コラム

こんにちは、この記事ではスペイン語とポルトガル語の違いについて紹介します。私個人的にも気になっていたのでたくさん資料を調べてまとめました!

スペイン語(スペイン語: Español)とポルトガル語(Português)は、ともにラテン語を祖先に持つ「いとこ」のような関係の言語です。地理的にも文化的にも近いこれら二言語には、多くの共通点がある一方で、発音や語彙、文法などに興味深い違いも存在します。ここでは、言語学習者向けにスペイン語とポルトガル語の主な違いと共通点を、わかりやすく紹介します。

発音の違いと特徴

スペイン語とポルトガル語を聞き比べると、まず発音の印象がかなり異なります。スペイン語は比較的クリアで母音がはっきり聞こえるのに対し、ポルトガル語は鼻にかかったような柔らかい響きが特徴です。

  • 母音の数と音質: スペイン語の母音は基本5つ(a, e, i, o, u)のみで、日本語の「あ・い・う・え・お」に近いシンプルな音です。ローマ字読みでも通じると言われるほどで、発音規則が比較的単純なのが魅力です。一方、ポルトガル語の母音はなんと9つもあり、口の開き具合によって開母音狭母音を区別します​。さらに語末の無音のe(発音しない母音)が存在するなど、ポルトガル語の母音体系はかなり複雑です。この違いにより、スペイン語話者にとってポルトガル語の母音は聞き取り・発音が難しく感じられることがあります。
  • 鼻音の有無: ポルトガル語の発音でもっとも独特なのが鼻母音の存在です。ポルトガル語では母音の後にmnが続くと、その母音が鼻腔に抜ける音になります。例えばポルトガル語で「はい」を意味する sim(シン)は、iが鼻母音化してフランス語の「アン」のような音になり、não(ナオン、「いいえ」)の ão も口蓋から鼻に抜ける独特の響きになります​。一方、スペイン語にはこのような鼻母音が無く、基本的に母音は常に純粋な音で発音されます。スペイン語の sim に相当する語は (スィ、「はい」)ですが、こちらは鼻にかからず明瞭な「スィー」という音で発音されます。
  • 子音の発音差: 子音にもいくつか顕著な違いがあります。例えば、スペイン語の文字j(またはgのe/i)は喉を擦るような強い「ハ」の音([x]音)になりますが、ポルトガル語のj(およびgのe/i)は英語の vision のような「ジ(zh)」音​。またポルトガル語ではchや語末のsが「シュ(sh)」と発音される傾向があり(例:chaveシャーヴ(鍵)、portuguess ポルトゥグェシュ****)​、スペイン語のchが「チャ(tch)」と発音されるのとは異なります。一方、スペイン語ではvbの音の区別が緩やかで両方とも「バ/ヴァ」に近い音になりますが、ポルトガル語では明確にvは「ヴ」/bは「バ」と区別して発音します。スペイン語特有の音としては、スペイン本国の発音ではzc(e,i)が英語の think のような無声歯摩擦音「θ(シス音)」になる点があります(例:gracia グラθ**ィア)。この「θ」の音はラテンアメリカのスペイン語やポルトガル語には無い音で、ポルトガル語や中南米スペイン語では同じ単語が「グラシア(s)」と発音されます。
  • Rの音: 両言語とも語中の単一rははじき音[ɾ](日本語のラ行に近い音)ですが、強いrrや語頭のrには違いがあります。スペイン語では舌を震わせる巻き舌の [r] 音になります(例:perro ペ[rr]オ「犬」)。ポルトガル語でも地域によりますが、ブラジルでは語頭/重複rが英語のhに近い喉音([х]または[ʁ]音)になることが多く、ポルトガル本国ではフランス語に似た喉を鳴らすような発音になることがあります。たとえば「車」はスペイン語で coche(コチェ)ですが、ポルトガル語では carro(カ[ʁ]オ)と発音され、rの響きがかなり異なります。

このように、発音面ではポルトガル語のほうが音のバリエーションが多く、スペイン語より習得がやや難しいと言われます​。

​逆に言えば、スペイン語はローマ字読み中心で日本人にも発音しやすい言語です。一方でポルトガル語の豊かな音体系は、慣れると耳に心地よい「音楽的」な響きがあり、これがポルトガル語の魅力だと感じる学習者も多いようです。

語彙の類似点と差異

単語(語彙)の面では、スペイン語とポルトガル語は非常によく似ています。両言語は起源を同じくするため、基本的な単語の多くを共有しており、ある調査では約90%もの語彙が共通するとも言われます​

。そのため、片方の言語を知っていれば文章を読んだり簡単な会話の内容を推測したりしやすいというメリットがあります。例えば以下のように、同じ意味で綴りがほぼ同じ単語が数多く存在します。

  • familia(スペイン語) / família(ポルトガル語) – 「家族」
  • casa / casa – 「家」(全く同じ綴りで意味も同じ)
  • color / cor – 「色」(スペイン語では color、ポルトガル語では語尾の子音が脱落して cor になる)

動植物や日常語でも共通のものが多く、例えば「猫」はスペイン語で gato、ポルトガル語でも gato、「木」は árbol(スペ)/ árvore(葡)、「ワイン」は vino(スペ)/ vinho(ヴィーニョ、葡)といった具合です。文脈によっては、お互いの単語がそのまま通じてしまうことも珍しくありません。 

しかし、語彙には微妙なずれや違いもあります。まず同じ対象を指すのに全く異なる単語を使う例として、挨拶や基本表現にいくつかの違いがあります。たとえば「ありがとう」はスペイン語では gracias グラシアス、ポルトガル語では obrigado オブリガード と全く別の単語です。また「さようなら」もスペイン語の adiós(アディオス)とポルトガル語の tchau(チャウ、※イタリア語由来)など異なる表現が使われます。このように、一部の基本語彙は共通せず、それぞれ独自に発達しています。 

さらに注意が必要なのは**見た目は似ているのに意味が異なる単語(フォルスフレンド)**です。スペイン語話者とポルトガル語話者がうっかり誤解してしまうケースもあるため、学習者は次のような例に気をつけるとよいでしょう​。

  • embarazada(スペイン語) vs embaraçada(ポルトガル語)
    (スペイン語で「embarazada」は「妊娠した」の意味。一方ポルトガル語の「embaraçada」は「困惑した/恥ずかしい」という意味で、字面は似ていますが全く別の状況を指します。)
  • rato(スペイン語) vs rato(ポルトガル語)
    (綴りは同じですが、スペイン語の「un rato」は「しばらく・短時間」という意味で使われ、ポルトガル語 um rato は「ネズミ」を指します。)
  • pasta(スペイン語) vs pasta(ポルトガル語)
    (スペイン語の pasta は文脈により「パスタ(食べ物)」や「練り粉、生地」の意味ですが、ポルトガル語 pasta は専ら「フォルダ、書類挟み」を意味します。)

他にも、スペイン語 éxito(エグジト:「成功」)とポルトガル語 êxito(エジト:「出口」という古風な意味 or 成功の意味でも使うこともありますが一般的ではない)など、戸惑うような語彙のずれが存在します。このような**「似て非なる単語」**に注意しつつ、逆に共通する単語を活用すれば、片方の言語の知識をもう一方の言語学習に役立てることができます。 

**例文で比べてみましょう。**スペイン語とポルトガル語で文を作ると、単語がよく似ていることが実感できます。

  • スペイン語: La casa es muy bonita.(ラ・カサ・エス・ムイ・ボニータ)
  • ポルトガル語: A casa é muito bonita.(ア・カザ・エ・ムイト・ボニータ)

どちらも「その家はとても綺麗です」の意味で、冠詞が la/a になっている以外はほとんど同じ単語・語順ですね。語彙の共通点が多いおかげで、初歩的な文章なら双方の言語話者が類推できる場合もあります​

一方で、単語そのものが異なる例も見てみます。

  • スペイン語: Estoy embarazada.(エストイ・エンバラサーダ)
  • ポルトガル語: Estou grávida.(エストウ・グラヴィダ)

これは「私は妊娠しています」という文ですが、スペイン語では embarazada(妊娠した)、ポルトガル語では grávida(同じく妊娠した)と、まったく異なる単語を使っています。ちなみにスペイン語の embarazada と発音の似たポルトガル語 embaraçada は前述の通り「困惑した」の意味なので要注意です。 

このように、基本的な語彙には共通点が多いものの、一部には重要な違いもあります。学習する際は、共通の単語を味方にしつつ、違いのある単語や誤解を招きやすい語にも目を向けると良いでしょう。

文法構造の比較

スペイン語とポルトガル語は文法的にも大枠では似通った構造を持っています​

どちらも名詞に性(男性名詞・女性名詞)があり、形容詞が性・数に一致し、動詞の活用(時制変化)が豊富で、主語を省略できる(いわゆるnull-subject言語)点も共通しています。語順も基本は「主語+動詞+目的語」のSVO型で、修飾語は名詞の後ろに置く傾向など、英語よりもむしろ互いに似たルールを持っています。例えば「黒い猫がいる」という表現は、スペイン語では Tengo un gato negro、ポルトガル語でも Tenho um gato preto と言い、語順や文法構造はとても似ています(ただし「黒」の単語がスペイン語 negro、ポルトガル語 preto と異なる語彙になっていますね)。 

とはいえ、文法の細部に目を向けるといくつかの相違点が見えてきます。

  • 代名詞と敬称の使い方二人称代名詞(あなた・君)の体系に違いがあります。スペイン語では親称単数は (トゥ、「君」)、敬称単数は usted(ウステッド、「あなた」丁寧)を使い分け、複数は vosotros/vosotras(ボソトロス/ボソトラス、「君たち」※主にスペイン本国で使用)と ustedes(ウステデス、「あなた方」丁寧/中南米ではこれが親称複数も兼ねる)を使います。一方のポルトガル語では、ヨーロッパでは tu(トゥ、「君」)も使われますがブラジルでは親しい間柄でも você(ヴォセ、「あなた」)を用いるのが一般的で、tuは一部の地域を除きあまり日常では使われません。você は元々敬称でしたが現在ではカジュアルな「あなた」に転じており、動詞活用は三人称扱いです(例:「君は話す」はポルトガル語で Tu falas または Você fala)。またスペイン語の vosotros に相当する親称複数形は、現代ポルトガル語では vocês(ヴォセス)で代用されるため、「君たち」に当たる固有の活用形(vosotrosに対応するvós形)は事実上廃れています。敬称についても、ポルトガル語では O senhor / A senhora(男性/女性に対する丁寧な「あなた」)という表現があり、場面によって使われます。代名詞体系はこのように異なりますが、いずれの場合も敬意の度合いで二人称を使い分ける文化は共通していると言えます。
  • 動詞の活用と時制: 基本的な時制(現在・過去・未来)や法(直説法・接続法・命令法など)のカテゴリは両言語でほぼ共通しており、活用パターンも類似しています。しかし、一部に使われ方や形の違う活用があります。例えば接続法の未来形は、スペイン語では現在ほとんど使われなくなった活用ですが、ポルトガル語では今でも条件文などで頻繁に使われます。スペイン語話者がポルトガル語を読むとき、「もし〜なら」という文で突然見慣れない活用形(接続法未来)が出てくるので驚くことがあります。同様に、ポルトガル語特有の人称不定詞(Infinitivo Pessoal)も重要な相違点です。ポルトガル語では不定詞(英語で言う to do に相当)に主語に応じた語尾を付けて活用させることで、主語を明示した節を作ることができます。例えば「私たちがその仕事をすることは大事だ」という文は、スペイン語では Es importante que hagamos el trabajo. のように接続法を使いますが、ポルトガル語では É importante fazermos o trabalho. のように不定詞 fazer(する)に「私たち(-mos)」の語尾を付けて表現します。この fazermos が人称不定詞で、「私たちがすること」という意味合いを1語で担っています。スペイン語にはこのような形は無いので、同じ内容を表すのに接続法節や動名詞など別の言い方をする必要があります。
  • 名詞の性と冠詞: 名詞の性別(男性名詞・女性名詞)は両言語に存在し、その多くは共通しています(例えば libro (m, 本)、mesa (f, 机) はスペイン語・ポルトガル語で同じ性です)。しかし中には性が異なるものもあります。例えば「ミルク」を意味する語は、スペイン語 leche は女性名詞 la leche、ポルトガル語 leite は男性名詞 o leite と性別が食い違います。他にもスペイン語 sol(太陽、男性名詞)とポルトガル語 sol(太陽、男性名詞)、スペイン語 luna(月、女性名詞)とポルトガル語 lua(月、女性名詞)のように一致するものもあれば、スペイン語 noche(夜、女性名詞)とポルトガル語 noite(夜、女性名詞)のように語形が少し異なるだけのものもあります。基本的に性の概念自体は似ていますが、細部では暗記が必要な違いも存在します。また冠詞の使い方にも若干の違いがあります。スペイン語では所有格の前に定冠詞を付けないのが普通ですが(例:mi casa「私の家」)、ポルトガル語ではしばしば定冠詞を付けて a minha casa のように言います。逆に、場所を表す前置詞+冠詞の縮約はポルトガル語のほうが発達しており(em + a → nade + o → do など)、スペイン語にも al (a+el) や del (de+el) がありますが種類は多くありません。例えば「家の中で」はスペイン語 en la casa、ポルトガル語 na casa と表記が異なります。細かな点ですが、こうした冠詞・前置詞の使い分けにも違いが見られます。
  • 語順やその他の違い: 文の語順自体は両言語とも柔軟で、大きな差はありません。ただし、スペイン語では疑問文の際に文頭に倒置が起こらない(英語のように助動詞を前に出したりしない)点や、ポルトガル語では動詞と代名詞の語順が場合によって入れ替わる点(Quiero verte.(スペイン語「君に会いたい」)に対しポルトガル語では Quero te ver も Quero verte も可能、など​)といった差異もあります。また、約物上の違いとしてスペイン語では疑問文や感嘆文の際に文頭に倒立した¿¡を付けるルールがありますが、ポルトガル語にはこれがありません。そのため ¿Cómo estás?(スペイン語:「元気ですか?」)は、ポルトガル語では Como estás? と頭の逆さクエスチョンマーク無しで書きます。細かな違いは他にも色々ありますが、総じて文法は共通点が多く、英語などと比べればスペイン語とポルトガル語同士のほうがはるかに似ていると言えるでしょう​joho-translation.com

文化的背景や言語の成り立ち

スペイン語とポルトガル語の関係を理解するには、その歴史的・文化的背景を知ることも大切です。もともと両言語は、古代ローマ帝国時代にイベリア半島(現在のスペイン・ポルトガルのある地域)にもたらされたラテン語が母体となっています​

ローマ帝国の支配下で話されていた俗ラテン語が、西ローマ帝国滅亡後に各地で独自に発展し、やがてスペイン語やポルトガル語といった別個の言語へと分化していきました。 

中世初期、イベリア半島では様々な王国や言語が混在していましたが、特に北西部ではガリシア=ポルトガル語と呼ばれる言語が話され、現在のポルトガル語の祖先となりました。一方、中部・北部のカスティーリャ王国で発展したカスティーリャ語(Castellano)が後にスペイン語(Español)として広がっていきました​

9~13世紀にかけてキリスト教勢力がイベリア半島をイスラム勢力からレコンキスタ(国土回復)する中で、カスティーリャ王国が大きく勢力を伸ばし、その言語が徐々に標準化されスペイン語が成立しました。同時期に西端ではポルトガルがレコンキスタを達成して独立国となり、こちらも自らの言語を標準化していきました。このように歴史的経緯から生まれた別々の国の公用語として、スペイン語とポルトガル語はそれぞれ確立していったのです。 

両言語は地理的に隣り合っていたことから、相互に影響も及ぼしています。特に大航海時代以降、スペイン・ポルトガル両国が世界各地に進出し植民地帝国を築く中で、その言語も新大陸やアジア・アフリカへ伝わりました。スペイン語は中南米の広範囲に広がり、ポルトガル語もブラジルやアフリカの一部に根付くことになります。この過程で、現地の先住民言語や他国の言語との接触から、それぞれの語彙に独自の発展が見られました。例えばスペイン語はアラビア語からの借用語が非常に多くあります。中世にイベリア半島を支配したムーア人(イスラム教徒)の影響で、arroz(米)や azúcar(砂糖)、ojalá(オハラ、「~でありますように」←アラビア語で「神が望むなら」の意)など、多くの単語がアラビア語起源です。また新大陸から持ち帰った chocolate(チョコレート、ナワトル語由来)や patata(ジャガイモ、タイノ語由来)などの言葉もスペイン語に定着しました。一方ポルトガル語も、アラビア語起源の arrozazeite(アゼイト、「オリーブ油」)等は共通していますが、それ以外にもブラジル先住民のトゥピ語由来の abacaxi(アバカシ、「パイナップル」)や sabiá(サビア、「コマドリ」(鳥))など独自の外来語を取り込んでいます。またポルトガル語は16~19世紀にかけて東南アジアや日本とも交流があったため、日本語の「パン」(葡: pão パン)や「コップ」(葡: copo コーポ)などはポルトガル語経由で伝わった言葉として知られています。 

文化的な側面では、両言語はそれぞれ豊かな文芸・音楽・慣習を育みつつ、互いに影響を与え合ってきた歴史があります。例えばポルトガルのファド(Fado)とスペインのフラメンコはそれぞれ国を代表する音楽ですが、哀愁ある歌詞の表現などにラテン系文化の共通の情感が感じられます。文学においても、スペイン語圏からはセルバンテスの『ドン・キホーテ』、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』など世界的名作が生まれ、ポルトガル語圏からもルイス・デ・カモンイスの叙事詩『ウズ・ルジアダス』や現代ブラジル文学などが輩出されています。言語としての近さから、お互いの国の作品が相手言語に翻訳されやすく、文化交流が活発である点も見逃せません。 

また、興味深い現象として**ポルトゥニョール (portunhol)**と呼ばれる混成言語があります。これはスペイン語(español)とポルトガル語(português)を混ぜ合わせた即興的な会話のことで、ブラジルとスペイン語圏の国々の国境地帯などでよく見られます​

お互いの言語がかなり似ているため、文法は自分の母語のまま単語だけ相手機の言葉に置き換えたり混ぜたりして何とか通じ合おうとするものです。例えばブラジル人とアルゼンチン人が出会ったとき、ブラジル人はポルトガル語をベースにしつつスペイン語風の単語を交え、アルゼンチン人はスペイン語にポルトガル語単語を織り交ぜ…という具合に意思疎通を図ることがあります。それだけ両言語は近いという証拠でもあり、話者同士が「なんとなく通じてしまう」面白いエピソードも生まれます。 

もっとも、ポルトガル語とスペイン語は完全に相互理解できるわけではありません。特に発音の違いから、会話の瞬間的な理解は簡単ではないことも多いです。それでも文章を書いて伝える場合はかなり高い確率で理解し合えると言われます​

実際、スペイン語話者とポルトガル語話者がゆっくりはっきり話すか、書面でコミュニケーションすれば、お互いかなりの部分を理解できるとも報告されています​

この絶妙な距離感が、両言語の学習をワクワクさせる要素かもしれません。スペイン語話者にとってポルトガル語は「聞き取りが難しいけど文章は読める不思議な言語」、ポルトガル語話者にとってスペイン語は「発音は分かりやすいけど早口だと追いつけない言語」という感覚があるようです​

地理的な使われ方


スペイン語とポルトガル語は、ともに世界中に話者が広がるグローバルな言語です。ただし、その地理的な分布や話者数には違いがあります。スペイン語はスペイン本国のほか、中南米の大部分の国(メキシコ、コロンビア、アルゼンチン、ペルーなど計20か国以上)で公用語として使用されています​

。またアメリカ合衆国にも数千万規模のスペイン語母語話者が居住し、アフリカでは赤道ギニアで公用語となっています。総計するとスペイン語のネイティブ話者は約5億5~6億人と推定され、英語・中国語に次いで世界で3番目に話者数の多い言語とされています​

。公用語としての採用国数も多く、国際連合や欧州連合(EU)、アフリカ連合(AU)など主要な国際機関で公用語の一つとなっています。スペイン語はまさに世界中で使われている言語なのです。 


一方、ポルトガル語は公用語としている国の数こそスペイン語より少ないものの、非常に広範囲にわたっています。ポルトガル語が話される代表的な国は、ヨーロッパのポルトガル、南米の大国ブラジル、そしてアフリカのアンゴラモザンビークギニアビサウカーボヴェルデ(緑の岬共和国)サントメ・プリンシペといった旧ポルトガル領の国々です。さらにアジアでは東ティモールでも公用語となっており、2010年代にはアフリカの赤道ギニアもポルトガル語を公用語に追加しました。これらを合わせると公用語とする主権国家は10か国前後ですが、ブラジルという一国だけで2億人を超える人口を擁するため、ポルトガル語の母語話者数は世界で約2億6千万人に上ります​

これは話者数ランキングで見るとスペイン語には及ばないものの世界第6~8位前後に入る規模です。ポルトガル語もまた国連やEU、AUの公用語であり、特に近年はブラジルの経済的台頭やアフリカ諸国の発展により、その国際的存在感が増しています​

スペイン語・ポルトガル語ともに各地域で多様な方言・アクセントが存在します。スペイン語はスペイン本国とラテンアメリカとで発音や語彙にいくつか差異があり、有名なところではスペイン本国の発音(カスティーリャ方言)では caza(狩り)と casa(家)をそれぞれ「カθァ」「カサ」のように発音し区別しますが、中南米の多くの地域では caza と casa の両方を「カサ」と発音します。また人称代名詞の項でも触れたとおり、スペインでは vosotros(二人称複数)が日常的に使われるのに対し、中南米では代わりに ustedes(敬称の二人称複数)で統一される傾向があります。さらにアルゼンチンやウルグアイなどでは  の代わりに vos を使う voseo(ボセオ)という独特の二人称もあります。このようにスペイン語は地域によっていくつかの違いはありますが、基本的にはどの国のスペイン語話者同士も意思疎通が可能な程度の差にとどまります。 

ポルトガル語も同様に、ヨーロッパポルトガル語(欧州ポルトガル語)とブラジルポルトガル語では発音や表現に違いがあります。一般にブラジルのポルトガル語母音をはっきり発音し抑揚がゆったりしているのに対し、ポルトガル本国のポルトガル語は早口で子音を弱く発音する傾向があり、初学者にはブラジルの発音のほうが聞き取りやすいと言われます​

例えば「リオデジャネイロ」の発音は、ブラジルでは「ヒオ・デ・ジャネイロ」に近い音になりますが、ポルトガルでは「リシュボア」のようにsや母音が脱落・変化して聞こえる場合があります(※「リオ」はブラジルの都市なので両者発音差ありませんが、ここでは例としてポルトガルの首都 Lisboa の発音差を念頭に置いています)。またブラジルでは二人称に você を用いるのが一般的なのに対し、ポルトガルでは今も日常的に tu と você を使い分けるなど、人称の使い方にも違いがあります​

​語彙面でも、同じものを指すのにブラジルでは trem、ポルトガルでは comboio(どちらも「列車」の意味)のように地域で全く異なる単語が使われるケースもあります。とはいえポルトガル語もスペイン語同様に、方言差を超えて互いに通じ合える範囲が広く、ブラジル人とポルトガル人でもゆっくり話せば十分意思疎通可能です。むしろスペイン語話者とポルトガル語話者が話すより、同じポルトガル語同士である分理解しやすいでしょう。 

最後に、スペイン語とポルトガル語はその話者数や使用国の数から**「世界共通語」**としての役割も果たしています。スペイン語は米州で広く使われるため国際ビジネスや観光で有用ですし、ポルトガル語もブラジルの市場規模やアフリカ諸国との関係で重要度を増しています。どちらの言語も習得すれば複数の国で現地の人々と直接コミュニケーションでき、文化を深く味わうことができます。二つの言語は共通点が多いので、「スペイン語を習得したら次はポルトガル語にもチャレンジしてみる」「ポルトガル語を先に学んでからスペイン語にも手を広げる」といった学習も視野に入るでしょう。 

まとめると、スペイン語とポルトガル語は「兄弟言語」と呼べるほど似通った点が多くありながら、発音や一部語彙・文法にはユニークな違いも持っています。そのため、一方を学べば他方も理解しやすくなる利点があり、言語学習者にとっては二倍楽しめる存在とも言えます。ぜひ両言語の共通点と相違点を押さえつつ学習を進め、スペイン語圏・ポルトガル語圏それぞれの文化や人々との交流を楽しんでみてください!

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